グラノーラ保存缶のお話。

Nov 04, 2015

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先日、グレイトーンの新色を発表したグラノーラ保存缶。2011年の発売から現在までかれこれ40色以上を展開してきたのですが、その製作をお願いしているのが東京・浅草橋にあるブリキ缶の『加藤製作所』。

思い出してください。ブリキ缶と言えば、昔から実家やおじいちゃんの家で使われているような茶筒や海苔の保存缶をイメージしますよね。表面が和紙で覆れた茶筒の蓋を開けると内側はシルバーのブリキだったりして、海苔の四角い缶やクッキーの詰め合わせ缶は、食べて終わった後は収納ボックスとして二次利用していませんでしたか?(←コレってすごく庶民的。笑)
そんな風に昔から私たちの暮らしに根付いていたブリキ缶を、加藤さんは今も変わらないスタイルで製造しています。

『加藤製作所』は、明治28年創業の110年以上の歴史を持つ老舗。
缶工場は、事務所と同じ東京・浅草橋にあります。FRUCTUSのオーナーが以前イベントで一緒になった紅茶屋さんの紹介で、加藤さんとのお付き合いが始まりました。ブリキ缶メーカーの老舗として、昔ながらの茶筒や海苔缶などはもちろんのこと、最近は若い層に指示されているコーヒーショップやクリエーターと組んで新しい試みにもチャレンジされています。

 
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少し前に工場見学をさせてもらって、缶の製造に対するボンヤリとした想像から、直接話を聞いたり見せてもらうことで驚愕の事実を目の当たりにしました。私たちが販売していたグラノーラ保存缶は、日本が誇るべき希少な職人による伝統技術の集大成だったのです! そんな素晴らしいブリキ缶の製造秘話を、みなさんにご紹介したいと思います。

加藤製作所の工場には、年季の入った塗装ブース、焼き窯、作業棚にさまざな色の塗料が所狭しと並んでいます。そしてここに並ぶ1つ1つの塗料は、発注先ごとに分けて用意しているそう(たとえ同系色でも色の配合が微妙に異なるので、依頼主専門のペンキを分ける必要があるとか)。あ、FRUCTUSの塗料を発見! これは松屋銀座限定のカラーのものです。
 

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さて、オーダーしたブリキ缶が完成するまでの工程は、すべてこの工場で行なわれているわけではありません。また、加藤さんが一から十までを行なうわけでもありません。このブリキ缶は、いろんな外部の職人さんによる手仕事と機械行程が合わさって完成する、分業スタイルなのです。

まずは缶の生地づくりから。
プレス屋の職人さんにブリキの板金からフタ面と底面を抜いてもらいます。次は別の職人さんがフタの天板と筒、本体の底面と筒を繋ぎます。FRUCTUSの保存缶のように、フタの付け根の縁に凸(でっぱり)がないものは職人さんによる手仕事で行なわれ、縁に丸っこい凸があるものは機械で作業します。ちなみに、FRUCTUSの缶が凸を付けずフラットに仕上げた理由は、フタと本体のつなぎ目にロゴを載せているから。凸を付けると簡単な機械作業で済むのですが、凸部分に文字が乗るのが見た目に美しくないので、手間を掛けてでも凸無しでフラットに仕上げたかったのです。
さらに内ぶたの製造は、また別の内ぶた職人さんと、またまた別の(内ぶたの)取っ職人さんとで分業しているとか。

こうして、素のブリキ缶が外部の職人たちにより作られ、『加藤製作所』に届きます。ここからが加藤さんの出番(もちろん缶の生地の発注や職人さんたちへのオーダーなども加藤さんがやってくれるのですが)。
 

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噴射機を使用し、吹き付け塗装を工場内で塗装を行ないます。缶の色は発注主によって微妙に異なるため、それぞれオリジナルカラーとして塗料を調合メーカーから仕入れるそう。缶のベースの色となる塗料が手に入ったところで、それを缶全体に霧吹きをかけて、ムラなく色づけしていきます。
ベースカラーの上にロゴやイラストなどを合わせたい場合は、ベースの塗料が完全に乾いた状態で上からプリントする必要があります(この乾燥が甘いと上から重ねる文字やイラストが滲んだり、よれたりするんです)。塗料の乾燥は、工場内にある年代物の大きな釜で焼いて行ないます。缶の色によっても焼く時間が異なり、Noritakeさんのホームページ内で限定販売したグラノーラ保存缶は白色なので燃焼時間が一番長いと聞きました。

 
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最後の行程として、蒔絵師によりロゴやイラストが施されます。シルクスクリーンでプリントする技術を応用し、グラフィックデザインを昔ながらのブリキ缶に落とし込むという画期的なアイデア。古い印象があった茶筒缶がまったく新しい印象のものとなって若い層の注目を集め、表現の幅、用途の幅が一気に広がっています。コーヒー豆、紅茶の葉、シリアル、薬味や調味料、おやつ、文具、オモチャ、アクセサリー…などなど、いろんなモノを詰めて、見せる収納として棚に置いておくような存在。

さて、完成したブリキ缶。一体何人の職人さんが携わったでしょう?
答えは、5人! 加藤さん以外に5つの職人技が合わさって一つの缶が完成するなんて、脱帽ものの製作ストーリーです。どこかで作業がストップすれば、完成も延期せざる得ないし、全てが機械のように予定通りにいくとは限らない状況(ご年配の職人さんもいらっしゃいますし)。だけど、こんなにも丹念に作られていると知ると、ブリキ缶に対する愛情と尊敬の心が湧いてきますよね。加藤さんのように手作りのブリキ缶製造を行なうのは、国内でも3社だけだそうです。

缶やその工場によってはコスト削減のために、最初に色や柄を板金に施し、その後に筒状に組み立てるスタイルの製作もあるそうです。全行程を機械で行なうことだってできます。ただし組み立てた後にズレが生じたり、補修やサイズ調整が効きにくいので、やっぱり加藤さんのようなクオリティ重視の昔ながらの製造は理想的だと確信。仕上がりの風合いもやっぱり職人による手作業が一番。手間とお金をかけてでも、大事にしたい部分がハッキリとあるのです。
 

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事務所では、加藤さんの妹さんとご両親が迎えてくれました。「茶筒としてより雑貨感覚で使われたいと思ったんです。これまではお茶や海苔など、中身が主役だったけれど、外見のルックスにこだわり、デザインされたプロダクトとしてシルクスクリーンのアレンジに挑戦しました。12〜13年前に中川ワニさんから依頼があった、ワニコーヒーの豆缶がその初の試みです」。

伝統と現代のスタイルを交ぜ合わせ、全く新しいモノを作り上げる。モノのクオリティは大前提。そこにデザインがあるか否か。ワクワクする気持ちも大事にしたいというのはFRUCTUSのグラノーラも同じです。

ご自宅でお持ちのカラーも新色のグラノーラ保存缶も、このような生産背景で大事に、大事に作られているということを感じながら、毎日の暮らしの中で使ってほしいなと思います。

あなたが持っているグラノーラ保存缶は、間違いなく「本物」です。

 
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